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Dear Someone. -社会心理学概論-

社会心理学に関連する記事を載せていきます。

囚人のジレンマ: 協力するか裏切るか、どっちを選ぶ?

 皆さんはこんな経験はありませんか?

 友達と電話していて、突然通信が切れてしまいました。さて、皆さんはかけ直すのでしょうか?ご存知の通り電話はお互いに同時にかけ直してしまうと「通話中」となって繋がらなくなってしまいます。しかし、かと言ってお互いに電話がかかってくるのを待っていてはいつまで経っても通話は始まりません。お互いに示し合わせることのできない状況で、あなたは次にどう行動しますか?

 このように、次にどっちの行動を取っても失敗する可能性があり、選べなくなってしまう状況を「ジレンマ」といいます。日本語訳は「葛藤」ですが、心理学ではそのままカタカナで使われることが多いです。

 よく考えれば、日常生活でもこうしたジレンマは多く存在します。例えば、カレーを取るかオムライスを取るか。早く寝るか、夜更かしして遊ぶか。私たちは常にそうした選択を迫られています。

 さて、冒頭の例に戻りましょう。電話が切れてしまった後の二人の状況をもう一度整理してみます。無事に電話がかかる結果を導く選択は、「相手がかけず、かつ自分がかけた場合」と「相手がかけて、かつ自分がかけなかった場合」です。一方で電話がかからないような状況を引き起こす選択は、「両方かけてしまった場合」と「両方かけなかった場合」です。このように、互いの選択が、相手の選択に依存しているような状況を、社会学では「ゲーム」と言います((1。

 このような「ジレンマゲーム」をシミュレーションするときに最も有名な例として挙げられるものに「囚人のジレンマゲーム」があります。まず、二人の共犯者が重要な犯罪の容疑者として、別件で逮捕されたとします。ふたりは別々の取調室に通され、事情聴取されることになりました。しかし、しばらくしても二人は黙っているので、しびれを切らした刑事はそれぞれ次のような提案をします。

 「このまま黙っているのもいいが、自白した方が身のためだぞ。黙ったまま刑が決まれば今立件されている刑によって懲役3年になるが、もし自白してもう一人の犯行も証言してくれれば減刑して懲役1年で済ませてやる。しかし、もしあっちが自白してお前が黙ったままなら、刑は重くなって懲役15年になる。まあ、二人とも自白した場合は両方とも懲役10年だけどな」

 つまり、一人の視点に立って整理すると「相手と自分が両方自白した場合」は懲役10年、「相手と自分が自白しなかった場合」は懲役3年、「相手が自白せず、自分が自白した場合」は懲役1年、「相手が自白して、自分が自白しなかった場合」は懲役15年となる。もっとわかりやすく言えば、相手を裏切れば軽い刑で済むけれど、相手も裏切ると共倒れになり、相手に協力すればまあそこそこの刑で済むが、もし裏切られれば最も重い刑を執行されてしまう。このように、「囚人のジレンマゲーム」は、①お互いに意思疎通できない状況で、②相手に協力するか、裏切るかの選択を迫られているというような相互依存関係をシミュレーションする一つの分かりやすいモデルとして、社会心理学では重要な役割を担っています。

 さて、人は「囚人のジレンマゲーム」と似たような状況に陥った時、どのような行動を取る傾向にあるのでしょうか。相手を騙すのか、或いは相手に協力するのか。「自己と他人の関係」を考えるうえで、このようなジレンマに直面することは避けられません。社会心理学とはで少し触れたように、「適応的視点」からこのジレンマゲームを眺めたとき、この思考実験は、人がどのようにジレンマを回避し社会に適応しているのかという問題を提起しているという点で、非常に重要な問題となります。

 実は、R.アクセルロッドがコンピューターでこの仮想のゲームをシミュレーションしたときに、意外な戦略が最強であることが判明しました。その戦略については、次回説明したいと思います。

 

「この前妻にケーキを買ってきたら、『ダイエット中になんてもの見せるの』と怒られたもんで、今回は豆乳を買ってきたんだ、ほら妻よ、これで痩せるの頑張ってな」

「え?もうとっくに痩せたわよ!!見てわかんないの!?最低!!!」

「はぁ、全く。どっちを選んでも怒られる。これじゃあ囚人のジレンマだな。まぁ、ゲームをしているのは俺一人だけなんだけど」

 

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------------------脚注

1. ゲームを行う際に、自分がどのような選択をすればいいかを方程式を用いて分析しようとする理論を特に、「ゲーム理論」と呼びます。